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ロゼは吉祥寺の繁華街の中にある古いビルの2階にある。深山隆与さんは昭和19年生まれで、現在63歳。 「生まれたときからうちが運送屋をやっていたから、運送屋の仕事をしていたの。普通こんなに体が小さかったらトラックの運転手なんてありえないじゃない?でも6人兄弟全員でやってたからさ」 深山さんは昭和53年に結婚。結婚するときに運送屋は兄弟に任せて就職したという。 ・・・ 勤めた食堂というのは長崎屋というファミリーレストランで、昭和50年代には全国に100軒近くあったという。郊外型などを展開するも、のちに長崎屋は倒産。 昭和50年代というとと今ほど飲食店の種類もなく、デパートの食堂で家族皆で食べられるのがとっておきの楽しみという時代だったという。 ・・・ 昭和58年、深山さんは吉祥寺に自分の店を持った。 ・・・ 「でもうちは値段を上げない。店を開くとき、コーヒーを飲んでごはんを食べても1000円でお釣りがくるようにしたいって考えたんですよ、お釣りが渡せるお店がいいなって。ゆっくりできてね。 今はハンバーグが850円で、コーヒーがセットだと+150円で1000円なんです。それが一番高いセット。これだけがお釣りがないんですが、あとは全部お釣りが出ます。 ミートならコーヒーとセットで700円だし。絶対1000円は超えないですよ。うちのやつ(奥さん)にいつも売り上げが少ないって怒られてるんだけどさ」 ・・・ 人間っていうのはひとつの場所に居続けるより、他を知ったほうがいいと深山さんはいう。環境が変わるとわかることがあると。空から見ると地上の見え方が違うみたいに、他の場所へ移るとものの見え方が変わる。 「だからあんまりこの場所に長居っていうのは本当はよくないのかもしれない。移りそびれちゃったけどね。」 そういって深山さんは笑った。 環境が変わって初めてわかることがある。それは紛れもない事実。しかし、同じように同じ場所に長年いたからこそわかることもある。 だからきっと、どちらがいいとか悪いとか、そんな簡単な話じゃないのだ。 変えたくなくても環境が変わってしまうこともあれば、変えたい変えたいと願い続けて結局変わらない場合もあるだろう。 意志と、抗えない自然の流れと、その中でバランスを取りながら皆毎日を生きているのだと思った。 (単行本『東京ノスタルジック喫茶店』河出書房新社刊、より一部引用。) 喫茶 ロゼ(吉祥寺)-02 につづく
by makishiozawa
| 2010-03-15 10:44
| 東京ノスタルジック喫茶店
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